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月刊ウチウミ 「テイスト今昔物語 〜喜・怒・哀・楽 モータースポーツ〜」

RADICAL WEBマガジン月刊ウチウミ 「テイスト今昔物語 〜喜・怒・哀・楽 モータースポーツ〜」

■こないだたまたまYouTubeでテイストやってて思いっきり見ちゃいました。
内海 最近顔出してないなあ。行けば知ったやつらはいっぱいいるけど。

■出た人に聞いたら、お金がかかるから若い人があまり入ってこないって。
内海 20年前に我々がやってた頃より各段にかかりますよ。

■どういうところに?
内海 とにかくタイヤ。昔のいわゆるSPタイヤが今はレーシングタイヤになってる。タイヤウォーマーが絶対必要だし、発電機も要る。ウォーマーと空気圧を完全に管理して初めてタイヤの真価が発揮出来るという……それがすっごいシビアでね。

■みんなそうなのか。
内海 それをやらないと勝てない。ハーキュリーズやモンエボで勝ち狙いのチームはまず履いてます。

■高そうだ。
内海 売値で言うとピレリのスーパーコルサが前後で6万円。それだって練習走行1日2本走ったら終わりですからね。

■バクチだなあ。
内海 下のクラスでもハイグリップのいいタイヤ履くしね。若者が続けていくのは難しいかも。

■内海さんが出ていた頃は?
内海 ゼロ1ですね。鉄フレームのナナハン、GSX750E4とかで。直近だと4年前、イエローコーンのマシンを作りました。「57秒出したい!」って杉田さんの要望に応えて。

■車両は?
内海 イナズマ1200にCB750Fの外装。タンクにはホンダのホンにスズキのキで「HONKI」って入ってて。

■どこかで見た気が。
内海 エンジンはクラスフォーが作ってウチはシャーシだけ。「57秒出せるマシンとはどういうものか?」って自分の引き出しをいっぱい引っ張り出した。

■コースから考えるんですか?
内海 そう。2kmしかないし、タイトなヘヤピンが続く。日本のサーキットの中でも独特なコースを速く走るための完全筑波仕様。★★★が★★★(企業秘密)、★★★が★★★(企業秘密)、バンク角。それとエンジンのパワーが揃えばタイムは出る。

■方程式があるのか。
内海 乗り手がサスペンションのセッティングをどこまで詰めることが出来るかも大事です。「あと伸び、ワンクリック」とか「あとプリロード半回転」とか、それくらいが分かるライダーじゃないとタイムは絶対出ないでしょう。

■シビアつかシビレます。
内海 こっちは筑波で勝つための仕様を作る職人でライダーはタイムを出す職人。ただアクセル開けてブレーキかけて曲がるってだけじゃ1分切ったところで行き詰まる。

■こないだはH2が勝ってましたね。
内海 あれはちょっとパワーがあり過ぎてタイムにつながらないんじゃないかなあ。決勝で59秒しか出てないし。2位の加賀山があの車体でタイムを出せてるのは彼が上手いからでね。

■内海さんが作ったイエローコーンは57秒切れたんですか?
内海 56秒99で予選トップでした。決勝も途中からトップになって、カタナにR1000エンジンの加賀山とワンツーのまま残り2周。このまま間違いがなければ優勝だ!ってところでエンジン壊れてゴール出来ず……。

■ドラマチックだなあ。
内海 勝てなかったけどレースならではというか、名勝負だった。あ! 凄いカッコいい昔のコマーシャルがあるんですよ。ポテンザの……(※スマホで動画を見せる)



■熱がありますねえ。
内海 ルマン24時間。熱狂するヨーロッパのレースシーン。人間味があるでしょ。観客も含めて関わってる人すべてが一体になってる。

■余計なやつがいませんね。ここにいる全員レースが好きなんだな〜って雰囲気。
内海 人が主役だったなっていうね。それが今唯一あるのがテイストかもしれない。素人もいて、勝ちを狙ってるやつらもいて。デジタルな戦いじゃなくアナログな感じがする。メーカーが関わってるレースじゃないんで普通の人が見ても面白いし。だから人気があるんだね。

■培ってきたものをぶつけてみたい気持ちは?
内海 あります。

■見たい! 仮に今のハーキュリーズで勝つために全集中で新しいマシンを作るとしたら?
内海 オリジナルシャーシでエンジンは最初から6速のGSXR1000。05、06年あたりでトラコンとか付いてない170馬力くらいの。

■意外とシンプルですね。
内海 ツボさえきちんと押さえれば57秒は出ますよ。どうやったらタイムを出せるかは決まっちゃってるんで、そこに合致するマシンを作って速い運ちゃんを乗っければいい。

■勝てるじゃん!
内海 「本気でハーキュリーズを獲りたい。こんなマシンを作ってくれ」って人がいたらアドバイスはしてあげられます。テイストは面白い。仕事でやれたならこんな幸せなことはないしね。

【2022 July】

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